海には、まだ誰もいなかった。私ひとりだけ。波の音とカモメの声しか聞こえなかった。水平線に船が一隻いるのが見えた。
船も私も寂しいと思った。でも、いろいろ音のなかで、人は海の音が一番好きだ。海を聞くのが何時までもつまらないことだ。
だから、寂しかったけれど海とカモメの声を聞くのは気持ちよかった。だまって、日の出を待っていた。
潮干だった。
その日の夜は暖かくて、優しい風がふいていた。しかし、私はじっとしていたの、身体が少し冷えてしまった。もう、あきらめようか、と思った。日の出を見ることは大切なことではないけれど、見たい気持ちをあきらめるのは、夢をあきらめるのと同じだと思ったので、待つことにした。
しばらくすると、日が出た。顔にあたる朝日の感触が暖かかった。
日の出前に他の人が来た。彼らはプロの写真家だった。しかし、日の出の写真を撮らなかった。少女の写真を撮るために来ていた。この時は光がとても美しくて、もっといい写真を撮る事が出来た。
この時は光がとても美しくて、もっといい写真を撮る事が出来たと思うのに。
それから、私はすこし散歩をして、自転車で家に帰った。この時は光がとても美しくて、もっといい写真を撮る事が出来たと思うのに。